食わずぎらいのそのあとに。
「タケルは最初から当たり前みたいにうちに泊まってたし、このまま一緒に暮らすのかなって思ってたの。そうするのが自然ていうか」
「俺もそんな気してたけど、泊まらなくなっても香はなんも言わないから、気にしてないのかと思った」
言い返そうと思ったら、タケルが照れたような顔をしてるのが見えて、もういいやと思った。
伝わった。お互い似たようなものだったって。一緒にいたいけど、相手の気持ちを確かめるのが怖くて、臆病になってたって。
「ごちゃごちゃ考えてた?」
ふわふわしたタケルの髪に手を伸ばして、いつも言われることを言ってみる。余計なこと抱え込んでるって言うけど、自分もでしょ。
「俺はね、田代さんが香の頭撫でてるのとか見るたびにぶっ飛ばそうかと思ってんだよね、いつも」
タケルは答えず急に違う話を始めた。ごまかす気?
「俺のだから話しかけるなって、会社中の男に言いたいと思ってる」
「それじゃ仕事にならないね」
「会社の奴らには内緒にしたいとか、チョコも開発部の残り物しかもらえないとか、俺かわいそうだと思うんだけど」
唐突に言われて、またハッと思い出す。あ!そういえばバタバタしてて渡せてない!
「ごめん、忘れてて」
「いいよ。それどころじゃなかったってわかってる。言ってみただけ」
と言う割にはふてくされて私の手から逃れるように顔をそらした。