食わずぎらいのそのあとに。
ああ、もうダメだ、また泣く。
「また泣く」
声が笑ってる。うるさい。
「ホルモンのせいで不安定になってるんだよね」
知ってるよ、そんなの。妊娠のこと、1人でネットでいっぱい調べたよ。泣きながら睨むと、頭をくしゃくしゃと撫でられた。
「ほんとに考えてたって、信じた?」
「うん。それにね、プロポーズの返事ちゃんとできなかったなって思ってたから、嬉しい」
朝ごはんの時にうやむやに返事したって、タケルも気づいてた?
「俺たぶん、びびってまだ言えなかったと思うから、今回できててよかったかも」
「結婚って、やっぱり怖い?」
「だから、そういう話じゃないって。わかってないよな、ほんとに」
どういう話よ。結婚するのびびってるってことじゃないの。よく言うでしょ、男にとって結婚は人生の墓場とか。
「バレンタインもスルーされるし、どっちが飽きてるんだって」
「だから、それは渡しそびれただけって言ったでしょ!」
意外とそこを気にしていたらしいことがわかって、慌てて言い訳する。でもなんか、かわいいな。そういうの。
モテるくせに。チョコなんて昔からきっとたくさんもらってるくせにね。