食わずぎらいのそのあとに。
「ねえ、田代さんと仲いいよね、最近」
そういえば、と思い出して話を変えてみた。
「便利に使われてるけど、仲良いって言わないよね。部長だよあの人」
「だって私のこと相談したんでしょ? プライベートとか相談するってよっぽどじゃない?」
「それは香の話だから分かるかなっていうのと、あとあの人もでき婚だろ?」
「そんなことないよ。結婚を考えてる彼女がいるって。ずっと前から」
昔、そう言って相手にしてもらえなかったんだから、間違いない。でもこの話をすると機嫌が悪くなっちゃうかな、また。
出方を間違えたような気もして口ごもると、タケルのほうからため息交じりにまた口を開いた。
「結婚して割とすぐなんだろ、その死産てやつ。会社の人呼んで結婚式とかしてないらしいじゃん」
「海外で式あげたって聞いてる」
「その後もめたっていうのはさ、結婚の前提が崩れて、おかしくなったんじゃないの」
「そんな」
でも、そう言われれば。結婚決まってて、ちょうど子供もできたんだって思い込んでたけど、そうじゃないかも。
「考えてるだけじゃダメなんだよな。伝えないと」
「うん」
「お互いね」
「うん」
覗き込んでキスしようとして来たのをさせないで、油断しているタケルをソファに押し倒した。
「なんだよ」
珍しい態勢になって笑ってる。
「ありがと。大好き」
言って首に抱きついた。