食わずぎらいのそのあとに。
「大丈夫。浮気の一度や二度、ドーンと構えていればいいのよ」

予想外の発言を母がする。そうなの? そういうスタンス? 驚いていたら、姉のほうが先に反応した。

「お母さん、そういう甘い顔してるからお父さんがつけあがったんじゃないの?」

「あんたみたいに怖い顔してると、そのうち愛想つかされるかもね」

そうだ、この二人は仲はいいのにこうやってすごい勢いで喧嘩をする。そっとその場を離れようとして、もちろんお姉ちゃんに捕まった。



「香、自分には関係ないと思ってるかもしれないけど。かわいい末っ子でいられるのも今のうちだからね。母親になるんだから」

「そうよ、タケルくんは年下なんだから、香がもう少ししっかりしないと。旦那の働きは妻がいかに支えられるかに掛かってるのよ」

「そうそう。甘ったれてたらだめだよね」

「わかってる。頑張ろうと思ってるんだってば」

防戦しながら、私を共通ターゲットにして仲直りをするのもいつものことだって思い出した。

かわいい健太達がいなかったらほんとにもっと足が遠のいてたと思う、この家から。

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