食わずぎらいのそのあとに。


用意しておいてもらった大きなケーキにろうそくを刺して、サプライズの仕掛け役にワクワクしている健太と打ち合わせる。

「ママとみのりがさっとカーテンしめて、オレがでんきをけす」

「そう、それで私がケーキ持って入っていくから、健太が『せーの』って言ってね」

「これひっぱるのは、うたがおわったあと、だよね?」

全員でキッチンから音を立てないように移動して、打合せ通り部屋をパッと薄暗くしてもらったところで、私も一歩部屋に入る。

「せーの!」

ハッピーバースデートゥーユー、とおなじみの歌に合わせて歩いて行き、26と書かれたろうそくが灯るケーキを、驚いた顔のタケルの前に設置した。




「おめでとう!」

歌の終わりに、パン、パン!と健太を筆頭に派手なクラッカーの音を鳴らした。

「ねがいごとだよ、タケル」

「ふーってして、ふーって」

と私たちの盛り上がりに押されるようにして、タケルが火を吹き消した。




薄暗い部屋で、タケルは困ったような顔をしているように見えた。でも電気をつけた頃には、いつも通りの笑顔で「ありがとうございます」とみんなに言っている。

姉がそのままケーキを切り分け始め、健太は「オレいちばんおおきいの!」と叫んで怒られている。

私はタケルの隣に座って「驚いた?」と聞いたら「うん、まあ」と言いながら「ありがと」と付け加えてくれた。

もっと驚くかと思ったけど、こんなもんかな。タケルが家族の一員になった感じがして、私はこっそりかなり嬉しかったけど。


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