食わずぎらいのそのあとに。
「俺も早く帰るのはしばらくは無理かも。でも産まれるまでには何とかするから」
「私が今抜けるのも相当迷惑だと思うし、二人でのんびりできるわけないよね」
「香も面白いところなのに、もったいないな」
うん、確かにそれはそう。あまり役に立ててないと思っていた管理の仕事が、最近は面白くなって来ていた。
前ほど一人で頑張らず、後輩でもなんでもとにかく話聞いたり手伝ってもらったりしてるうちに、管理チームを独立させる話も持ち上がってる。
「育休取って戻るって言うのも、難しいのかなって少し思ってるの、最近」
「辞めたいってこと?」
「土日出勤とか残業とか多いでしょ、開発って。私はできないってなったら真奈達にしわ寄せ行っちゃうし、かえって迷惑になるかなと思ってる」
「営業に来る?」
「あるわけないでしょ」
わかってるくせに。タケルと同じ部署なんてあり得ないし、そもそも私は営業は全然ダメで追い出されてる。
「管理チームができればなんとかなるんじゃないの」
「そうかな」
「俺が先に帰るとかさ、そう言うのもできるかも」
「イクメンみたいな感じ? タケルはそう言う感じしない」
「俺も想像つかないけど。やるしかないんじゃないの」
気にしていなさそうにタケルは言ってくれた。いい旦那さんってことになるんだろう。でもなんだか私はモヤモヤしていた。
20代半ばの仕事が伸び盛りの時に、子育てしてる場合なのか。私はともかく、タケルはそういうの違うんじゃないの。