食わずぎらいのそのあとに。
社内にオープンにしたんだからって、今日は珍しく一緒に帰る。駅まで歩く道すがら、タケルに聞かれた。

「メガネの高木くんってなんなの」

「大学で同じ学科の友達。人の名前が覚えられない困った人で、1回私を姫って覚えちゃってから普通にそう呼んでくるから、学科でそれが定着しちゃったの。超恥ずかしかったよ、慣れたけど」

「武田さん的ポジションの人かと思ったけど。守ってくれるんだっけ?」

「武田みたいに友達かっていうと微妙。高木くんって学科でなぜか偉いのね。頭いいからか、雰囲気かよくわかんないけど。みんないつのまにか言うこと聞かされちゃうの。みんなが酔ってる時とかは、高木くんのとこにいれば安心」

「やっぱり武田さんじゃん。武田さんの彼女ってことで守られてただろ、色々 」

守られてたかなぁ。否定しても「いや、実は付き合ってるらしい」とか面白がられてたから、途中からはほっといた。

「あれってみんな信じてたの?」

「当人同士が濁してたら普通信じるよ。俺は武田さんに聞いて知ってたけどね、付き合ってないの。でも口説かれたことぐらいはあるでしょ?」

「付き合う?って聞かれたことはあるかな。でも同期だし、そんなんじゃないし、それだけ」

「まるっきり俺じゃん。俺よく頑張ったな」

そう? タケルにも言われたような気がするけど、本気とはとても思えなかったけど?

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