食わずぎらいのそのあとに。

コミュ力高いと思われてたのかな、そんなだったら噂とかされないんだけど。

「私は逆に男性には媚びたりしますね。平内くんにも媚びてるように見えましたよね?」

おお。前に駅前で遭遇した話ね? しなだれかかってる感じではあった。策士だなこの女子、とは思った。そうはっきりとは言えませんが。

「あの頃ちょっとへこんでて、平内くん一見かっこよくて優しいんで間違えましたね。意外と腹黒くて趣味じゃないですから。その後は本当に。奥さんを溺愛って感じで入り込む余地もないでしょうしね」

「腹黒いかな、やっぱり」

「香さんには見せないんじゃないですか、そういうの」

え、あたりなんだけど。なんでわかるのかと驚いてみたら、今度はタケルみたいに偉そうな笑顔が返ってきた。

「かわいいなぁ、思った通り。大事なんですよ、よっぽど。うらやましい、愛されてて」

「え? えーと、でもタイプではないんだよね?」

「黒いのが見えちゃうとお互い嫌ですよね。まっすぐな人がいいですね、私は」

唐突に、高木くんの顔が浮かんだ。あのまっすぐなんだけどなんだか全然わからない変人。

いや、違うよね。顔は好みならかっこいいかもしれないが、間違いなくタケルみたいに優しくない。

「とにかく本題に入りましょう。よろしくお願いします」
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