食わずぎらいのそのあとに。
新卒採用組の面談は滞りなく進んだ。私はあえて雑談に流して場を緩めて欲しいと言われている。
作った話じゃなくて、ぽろっと出るような本音が欲しいって。
その通りみんなの趣味の話に時々振ったりしてたので、恐らく『ここでなにやってんだろうこの人、暇なの?』と思われているだろう。
まあいいか。
今回は、3年目に入った安藤沙耶ちゃんの番。新卒で営業職で、ほぼ最年少の職場でよく頑張っていると思う。
でも彼女から出た言葉は意外なものだった。
「開発側の話についていけないというか。平内さんが来てから特に思うんですけど、最初は開発に入ればよかったって」
そうなのか。システム開発経験あった私が行ったからって営業力なかったけどね、難しいね、そういうキャリアパスって。
「技術的な詳しい話し聞きたくても、階も違って入りにくいんですよね開発室。営業がなにしに来たのって感じにみんな見てくるし」
「あれ、でも沙耶ちゃんこっちの休憩室時々来てない?」
「苦肉の策ですよ。休憩室で会ったり飲み会出たりして、関わりない人とのコンタクトを増やしてるんです。勉強もしてみたんですけど空回りしてる気がします」
へー、えらい!そんなことしてるんだ。営業ってこういう見えて動ける子がいいんだろう。
エンジニアが沙耶ちゃんを見てるのは、きれいな女の子来たっ!て物珍しさで見てるんだと思うけれど。