食わずぎらいのそのあとに。

面談相手を送り出すと、早紀と２人で毎回振り返りをすることになっている。

「安藤さんは評価も高くてノーマークだったんですけどね、難しいな」

珍しく早紀がため息をつく。何かと不満をぶつけられたり愚痴を言われたりする役で大変そうだ。



「でも毎回思うけど、やっぱり人事っていいね。上司にだけじゃなくて話を聞いてもらえるっていうの、大事だと思う。大事にされてるって思いたいよね」

自分が20代半ばの頃も妙に悩んでいたけれど、人事に話を聞かれた覚えはないな。本当にそう思って言ったら、早紀がくくっと笑った、

「キャリア設計の話なんですけどね。香さんに掛かると仕事だってことちょっと忘れますね」

「そう？ 一応真面目にやってるんだけどね？ 最近頭回らないからかな、ごめんね」

「いえ、そこが狙いですから。それに経験に基づくアドバイスもさすがですよね。私は実感部分ではエンジニアの苦労はわからないです」

「苦労しても成果出てないけど。それはそうと、さっきの話は沙耶ちゃんメインで動くといいよ。あの子すごく顔が広くて可愛がられてるから」

「ご自分こそ、そう見られてますよ。上層部から新人まで、味方につけてるって」

「私？ そう？」

「うらやましいなあ、そういう天真爛漫さというか。引き続きよろしくお願いします」

本当に早紀は、タケルとか田代さん側の人。よく見えて、動ける人。

私のほうがずっとうらやましいのだけれど、そちら側から見れば何かうらやましがられるところもあるんだろう。