食わずぎらいのそのあとに。
日曜日、タケルが出かけてしまった部屋でゴロゴロしているところに、高校からの友人リサが来てくれた。
去年出産したリサはフリーで少しずつ通訳の仕事をはじめていて、必要な時には0才の息子をベビーシッターに預けている。本格的な仕事をするまではこのスタイルで行くそうだ。
「自分の時間も大事だし、大人の都合で連れまわすよりもいいかなって思ってる。理解されないこともあるけどね」
ふんわりと笑うけれど、気にしている様子はない。今日もちょっと遠いからと、実家に預けてきている。
「私はお姉ちゃんを見てるせいか、小さいうちはべったり一緒にいないといけないような気がしちゃうんだよね。仕事と家庭の両立とか全然イメージわかないんだけど」
「そうだよね。会社勤めは大変そう。でも無理せずシッターさんとか見つけたほうがいいんじゃない? 香とタケルくんは二人の時間がまだまだ大切でしょ?」
「そういうものかな」
「だと思うよ? あれ、でもおかしいね。私が香にアドバイスとか」
柔らかにリサは笑う。確かに。リサと私の関係は、昔からぼんやりして危なっかしいリサに私が偉そうにものを言っていたから。
リサは聞いているようで聞いていないんだけど。流されやすそうに見えて、実は芯が強い。私なんかよりずっと。