食わずぎらいのそのあとに。
6月の祝宴


あわただしく過ぎた5月を抜けた6月頭。

まだギリギリ梅雨入りはしていなくて、今日は晴れとはいえないまでもかなり明るい曇り。

結局引っ越していない部屋の窓辺で空を見上げる。

「日頃の行いがいいからかなぁ」

「俺がね」

「そうだね」

タケルに背中を預けながら笑って返事をしたら、後ろから回した手で大きくなったお腹を撫でられた。

「体調平気? 貧血気味になったら途中でもなんでも言えよ?」

「平気。パーティ午後からにしてもらってるし、行くだけのお客様状態なんだから」

「香は自分を高く見積もりすぎだから」

「どうせ役に立ちませんよ」と振り払おうとしたら、「拗ねるなって」と笑ってお姫様抱っこに抱え上げられた。

「重い」とふらつきそうになってる。

仕方ないでしょ、妊婦だもん。首に手を回して少しでも軽くしようと頑張ってみるけど、ダメだよね。

そのままソファに自分ごと座るから、タケルの膝に座って甘えてるような形になった。

「甘え下手のお姫様だからね」

「そんなことないでしょ」

「あるよ。頑張りすぎ」

そうかなぁ。だいぶ力抜けてきてると思ってるんですけど。こんな体勢だし、甘ったれすぎじゃないの?どちらかといえば。

もうすぐ母になるんだから。





少しアクセスは悪いけれど広々とした会場は、アイボリーのタイル張りの明るいテラスがついていて、ほんとによくこんなところ取ってくれたなぁと今さながら感謝がわいてくる。

受付に真奈と沙耶ちゃん、司会は沢田。他にもすべて同期や後輩たちが取り仕切ってくれた。

本当に結婚式への憧れやこだわりがないのか私、と自分でも呆れるほどになくて全部お任せした。

ただもう、ありがたくて、始まる前から涙がでそうだった。



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