食わずぎらいのそのあとに。
そんなバタバタで緊張する間もなく、パーティ開始の時間になってしまった。
タケルにエスコートされての入場では、生演奏をバックに拍手やフラッシュに歓迎されて、予想以上に華やかに式が始まった。
高木くんのバイオリンを中心に奏でられる音楽が、開け放たれたテラスで空へ抜けるように響く。踊りだしたくなるような、泣きたくなるような、不思議な音色だ。
結婚式っぽくはないかもしれないけれど、今日のこの場にはとても合っている気がする。よかった、弾いてもらえて。
早紀を目で探すと、横から高木くんを見つめているようだった。「まっすぐな人がいい。」確かそう言ってた。うん、まっすぐはまっすぐかも。
司会の沢田は笑いを織り交ぜながら盛り上げてくれて、親友としてリュウくんのスピーチになった。
「えー、俺と香ちゃんの出会いは、去年の夏、地元のでかい夏祭りが会った時にさかのぼるんですが」
「お前の出会い聞いてねえぞ!」
すかさずタケルの地元メンバーから野次が飛ぶ。あうんの呼吸だ。
「まあその時にはですね、香ちゃんは別の男とお祭りに来てまして、タケルが割り込んでいくっていう男気を見せていて」
「おー」と今度は会場全体がどよめいた。別の男って、健太でしょ。6才だよ。
「相手の男も『香ちゃんと結婚する』って宣言していたのを奪ったわけですが」
ともったいぶった後、リュウくんから意外な言葉が出てきた。
「傷心の彼にインタビューしてきました」