食わずぎらいのそのあとに。

余興やスピーチで笑って泣いて、最後は出口でみんなをお見送りしてパーティはあっという間に終わってしまった。

片付け終わるまで座っててと言われた隅っこで一息ついていたら、リュウくんがやってきた。

「お疲れ様、香ちゃん。ごめんね、泣かして」

「ううん。かえってみんなにおめでとって言ってもらえたよ」

「そっか。香ちゃんて、身体弱いんだ」

「弱いってほどでもないけど」

「もったいないかなとか俺は思ったんだけどさ、転職の話。でもそういうの聞くと、まぁ今はないってのもわかるよなぁ」

「うん、そうかな」

転職の話? なんのこと?と思ったけれど、知っていて当然という風に話されて、つい適当な返事をした。

「焦らなくてもまたチャンスあるだろうしね。でもさ、あいつはほんとできる男だから支えてやってよ、香ちゃん。俺なんかが言わなくても大丈夫だろうけどさ」

言うだけ言うと、「じゃ、またね」とリュウくんは爽やかに行ってしまった。



チャンス? 転職の話なんて一言も聞いてない。





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