食わずぎらいのそのあとに。


「もっと、なんでも話して」

「聞かれれば」

「聞かなくても話して」

「わかった。努力する」

「リュウくんに言えることは私に先に言って」

「リュウ?」

「そうだよ、奥さんなんだから。一番になんでも聞きたいの」

「なんだよ、リュウに対抗心燃やしてたの? かわいいな」

「そんなんじゃないよ、ばか」

でも、案外そんなのかもしれない。一番そばにいると、思いたいんだよ。結婚してても、私たちはまだまだ、お互いをわかってない。



時間をかけて、気持ちを伝えて、夫婦になっていくしかないんだ。

「私ってなにを、わかってないの?」

聞いてみる。そうだ、もうバレてるんだから、聞いちゃえばいいのかもしれない。

「だから、俺は俺なりに努力して負けないようにしてんだよってこと」

負けない?

「何に? 誰に?」

「誰にも」

だめだ、全然わからない。

「わかんなくていいよ」

「え、やだよ。ちゃんと私がわかるように話してよ」

「わかんないことは、わかんないままでいいんだって」

納得がいかないのに、タケルはすっかり解決した気分らしくそう言ってくる。
< 97 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop