ビルに願いを。

電話を切ってから、1人の部屋で考える。言えないなぁ、セキュリティとかいうのを除いても。そのジョー・サノのサポート要員なんだって、私。何するんだろうね、ほんと。

女好き、ね。ケイティに一途ってわけでもないのかな。どっちでもいいけどさ。




圭ちゃんの家は3LDKのマンション。私は圭ちゃんのお姉さんの部屋に住んでいる。

6年前、パパに法事で会った圭ちゃんは、持ち前の聞き出す力で、私が家出を繰り返しママが心を病み始めていることを知った。

そして、どうせほとんどいないから杏はうちに住んだらどうかと言ってくれたそうだ。

途方に暮れていたパパはその話に飛びついた。両親とお姉さんを交通事故で亡くした圭ちゃん。家族が欲しいとパパに言ったんだって。



私は最初、自分を彼の愛人的な立場だと思い込んでいて、夜になって寝室に行った。

心底驚いていた圭ちゃんは、いつまででもいていいからそういうのをやめろと言った。

『いつか本当に好きな人ができるまで、他の誰とも寝ないように』

呪文のように唱えながら指輪をはめてくれた。

お姉さんの形見だと言うそれは、私の右手の薬指にぴったりとはまって、少しは賢い人間になれるような気にさせてくれたんだ。
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