ビルに願いを。

即席チーム内での最初の話し合いは面白くて、私も意見を言わせてもらった。

でも、だんだんと各自が本格的な作業に入る頃には、やれることがなく後ろから見せてもらうだけになっていく。

丈はチームメイトの後ろから何か話しかけたり、たまに他のチームから相談されて出て行ったりしている。

年齢なんて本当に関係ないことがよくわかる。たぶん最年少の丈は想像以上に尊敬を集めていて、頼られている。本人は全然愛想がないのに、引っ張りだこだった。

他のチームの状況を私ものぞいてみると、偵察かと嫌がられた。丈はいいのに!って当たり前か、そんなの。



一方でスタッフさん達は夕食や飲み物をたくさん手配したり、作業風景を写真に収めたり、夜まで忙しそうにしていた。

いつの間にか大量の毛布や枕も運び込まれているが、リラクシングエリアはいまだ空っぽ。みんなアドレナリンが出てるようだ。



どっちつかずの私はどうしたものかな。もう真夜中で帰るにも中途半端だけど、運悪く柔らかいプリーツスカートを履いている。

図書室が女性用仮眠コーナーになるっていうけど、あそこ外から見えるじゃない? 毛布かけちゃえばいいかなぁ。

手持ち無沙汰のせいか眠気がやってきてはいる。コーヒーを入れて同じチームになった人たちにも持って行こうかな、と考えながらあくびが出ちゃった。

ふらりとカフェエリアにやって来た丈と、その時目が合った。今のあくび、見られたかな。

「丈も休憩?」

「ちょっとね。昨日もあまり寝てないから、さすがに疲れて来た」

「部屋に戻って少し寝て来たら?」

同じビルのホテルなんだからすぐ帰れるでしょう。でも、「その辺で寝るからいいよ」と気にしていない様子。


< 40 / 111 >

この作品をシェア

pagetop