ビルに願いを。


朝になると通常の仕事に戻る人もいたし、仮眠を取る人もいた。3時ギリギリまで作り込んでいるチームもありつつ、時間通りに再集合できた。

各チーム、プレゼンの後に質疑応答タイムがある。

複数人が別々にレビューして点数を競えるようにするという機能追加もあったし、次のコードに改善が見られるか評価する試みもあった。説明が難しすぎて、何をどう評価しているのかわからない。

昨日出ていたアイデアともまたちょっとずつ違うんだ。

何しろ一晩でなんでも作っちゃうのがすごい。さすがのメンバーなんだって、改めて思う。



優勝チームを決めたのは出張から帰ってきた社長で、突然の出来事に驚いたが喜んでるとスピーチした。

蓄積されたコードを分析して良くない癖を自動で指摘するという機能が不完全だが面白いと優勝になった。引き続き改良して実用化して欲しいとのこと。

なんでもいいよと言われた賞品は、希望によりカリフォルニア本社への訪問ツアーに。みんな会社と仕事が好きなのだ。







丈は眠たげに 「俺もう今日は帰って寝るから」と話しかけてきた。

「残念だったね、勝ってたら帰れたかもしれないね」

「俺は信用されてないから無理」

「そんなこと……あるかな」

パスポートを取り上げられちゃってるんだもんね。あまり信用されてはいなそうだ。

それにしても普通に話しかけてきてくれてよかった。誤解はされてなかったみたいだ。でも念のため一応言い訳しておきたい。

「あのね、私もあんな格好で寝ていてごめんなさい。でも本当に着替えがなくて」

「わかってるよ。俺が悪かったって。なんで謝るんだよ、さっきから」

「だって、ビッチって言った……」

「言った? ちょっとびっくりしたんだよ。それだけ」
< 44 / 111 >

この作品をシェア

pagetop