ビルに願いを。
何を着るかなんて、迷うヒマもなかった。
麻里子さんと一緒に、会議室でスタイリストさんにサイズや似合うカラーのチェックをされる。
数日後には何着か候補の服が届き、試着して一番似合うと言われたドレスに決まった。
当日も、出かける前に27階の会議室で髪のアレンジとお化粧までしてもらう。ここまで作り込んでいる割に、ヘアスタイルもメイクも一見それとわからないほどナチュラル。
「フェニックスの顔になるわけだから、手をかけつつも安っぽく派手にはしたくないのね。それに杏ちゃんは若いし、似合うものを身につければそれだけできれい。いつもちょっと地味すぎると思ってたのよね」
確かに、自然なのにさりげなく美人にバージョンアップ。そんな感じがする、自分でも。
麻里子さんは上品な光沢のベージュのロングドレス。私は膝丈でフリルのある可愛い感じのスタイルだけれど、深い青が子供っぽさを抑えてくれていた。
コンコンと控えめなノックの後、社長と丈が会議室に入ってきた。2人ともスーツをきれいに着こなしている。
男の人にきれいなんておかしいけど、そうとしか言えない。サイズのあった上質なスーツに、服に着られていない姿勢と品の良さ。