ビルに願いを。
大きなベッドに優しく押し倒されたところで、誤解を解かなきゃと思い出す。
「待って」
「いやだ」
「違うの、ほんとに」
「なんだよ?」
「あのね、圭ちゃんとはなんでもないから。家に置いてくれてるだけだから。親戚なの、お兄ちゃんみたいな人なの」
両腕で身体を支えながら私の上にいる丈が、驚いている。
「……指輪は?」
「お守り。本当に好きな人ができるまで、他の誰とも寝ないようにって」
何か口の中で呟いたのが聞こえる。bitchって言った。なんで!
言い返そうと思った時にはまたキスで口を塞がれていた。そのまま話す隙を与えない。
強引なようでいて優しく、まだ緊張している私をだんだんと溶かして行く。丈はなにをしても彼らしくて、嬉しくなって少し笑ってしまった。
「なに?」
不審そうに身体を離した彼の首に手を回して「大好き」と告げる。
ほころんだ優しい笑顔が、言葉じゃなくても私を好きだと告げているようで、嬉しくて私からくちづける。
もう一度「好き」と声を漏らして、意味のある言葉を言えたのはそこまでだった。
また何も考えられなくなりながら丈にしがみつき、何かを祈ることさえできなくなっていった。
今度こそ何も、これ以上願うことなどなかったけれど。