拝啓、近づきたくないキミへ
「ねぇ、砂月からも言ってやって。ツキ菜に教室に来るようにって」
「アイ、砂月くんを巻き込むようなことはしないで下さい」
「何言ってるのさ。砂月はクラスメートで他人じゃない」
せっかく空気が良くなってきたのに話を蒸し返すなんて…。
私とアイの睨み合いが始まってしまう
「いつまで逃げるつもり?ツキ菜」
「…………………」
そう、私は学校には通っているものの教室には入って授業を受けていない。
下校時間までずっと保健室にいる。
いわゆる保健室登校ってやつ。
クラスメートからイジメを受けているとかじゃない。ただ教室という空間にいるのが辛くて
自分にいずれは訪れる現実から目を逸らしたくなって保健室登校になった。
保健室で担任の神宮寺先生から出される課題をやりながら一日を過ごしている。
詳しい事情を親も教師もアイも知っている。知っているからこそとやかく言われないけどアイは違う。
アイは私の行動を許してない。
「俺が思うにツキ菜ちゃんのタイミングで良いんじゃない?無理やり教室に連れて来ても逆効果で、困るのはアイレスだろ?」
砂月くん、ごもっとも。
私が言い出せなかった言葉をスラスラと言ってくれて助かった。
「砂月はツキ菜に甘いよ。このままだとツキ菜は卒業できないかもしれないんだよ?」
詰め寄るようにアイは砂月くんに反論するが私は砂月くんを庇った。
「それは大丈夫です。大量の課題でノルマを達成しているので砂月くんを責めないで下さい」
本当は私だって教室でクラスメートみんなと授業を受けたい。でも気持ちの問題かもしれないけど拒絶してしまう。
まるで、向日葵が業火に焼け落ちていくかのように…
嘘の笑顔の仮面を被りながら私はクラスメートと共に過ごしたくないんだ。
「この話はおしまい。早く学校に行きましょう。アイ、砂月くん」