勿忘草~僕は君を忘れてしまった。それでも君は僕を愛してくれた~。
講義は坦々と進み、坦々と終わっていった。
無事に講義が終わってちらほらと席を放れていく学生たちを尻目に俺はチラリと隣に座っている榎本 涼哉へと目を向けた。
榎本 涼哉は静かにノートを見つめていた。
「要、昼は?」
ノートに目を向けたまま榎本 涼哉が訊ねてきた。
俺は『決まってない』と答え意味もなく微笑んだ。
「なら一緒に食わない?」
榎本 涼哉のその言葉に俺はコクリと頷いてまた微笑んだ。俺のその様子を見て榎本 涼哉は『よし』と呟き、席を立ち、ゆっくりとその場を離れはじめた。そのあとに俺も静かに続く。