by HEART
ほんの少しだけ、近付くキョリ、。
*那津永[ナツエイ]
*御倉[ミクラ]
***
私「おはようございます。」
?「あぁ、御倉さん!おはようございます。」
?「体調の方は大丈夫ですか?」
私「はい、もう大丈夫です。休んでた分までしっかり仕事をするつもりなので!」
?「さすが、御倉さんっ!働き過ぎには気を付けてくださいね?」
私「あはは...き、気を付けます!」
病院から無事に退院し、
出勤してからすぐに声を掛けてくれたのは...
デザイナーで同期の羽島くん。
親しいっていうほどの仲ではないけれど、
時々こうやって気を遣って話しかけてくれる、同期の一人だ。
会社の人は、上司と親友以外...
私が余命宣告をされていることを知らない。
医師に伝えられた余命は、一年。
場合によっては、
一年も生きられないかもしれない、、そう告げられた。
小さい時から体が弱く、頻繁に入退院を繰り返していた私...___
大人になってからは、入退院を繰り返すことは減ったものの、、
まだ、時々入院をしなければならない時がある。
体がいくら弱くても、
憧れの*si shionie*のデザイナーとして働けて、本当に良かったと思う。
そして、
今日はどうやら今人気を集めている、
若手俳優が出演するドラマの衣装について、
打ち合わせをするそう。
他人事に聞こえるようで、実は違うこの打ち合わせの話...
なぜなら..____
良い上司に恵まれたおかげで、
私も参加させてもらえることになったから。
***
プロデューサー
「えぇ、では...新作ドラマの撮影にて必要となる衣装のデザインのお話を、今回は*si shionie*さんにお引き受けいただいた訳ですが...」
プロデューサー
「これからどうぞよろしくお願いします。」
上司
「こちらこそよろしくお願いします。我がデザイナーチーム一同、今回の衣装デザインに精一杯協力させて頂きます!」
プロデューサー
「これから、衣装のデザインが楽しみで仕方がないですね。」
プロデューサー
「那津永、自己紹介を...」
那津永
「今回のドラマに主演として出演する予定の那津永 瞬です!デザイナーチームの皆様、これからどうぞよろしくお願いします。」
チーム一同
「よろしくお願いします。」
< コンコン >
私「失礼します。御倉です!遅くなって申し訳ありません。」
上司「体調は大丈夫なのか?」
私「ええ、もう何ともないです。」
上司「そうか...じゃあ、自己紹介をしてくれ。」
私「今回、デザインチームのリーダーとして衣装デザインに携わらせて頂きます、御倉ハルです。よろしくお願いします!」
那津永「御倉さん、よろしくお願いします。僕の自己紹介は要らないですよね?」
私「な、那津永さんっ!?」
上司「何だ、御倉?那津永さんと知り合いなのか?」
私「あ、はい..まぁ、、先日、偶然知り合ったもので__ 」
***
それから一通り打ち合わせを済ませ、
打ち合わせ終了後...
那津永さんに呼ばれ、会議室にそのまま残った私...
いくら待っても無言のままの那津永さん...
耐えかねた私が先に口を動かすものの___
私「あの..___な、那津永さん...?」
那津永「だから、この間言ったでしょ?そのうち分かりますよってね。」
あ、あれ普通になってる...
私「まさか、そういうことだったとは...」
ま、まぁいっか!
那津永「たしか御倉さんって有名なデザイナーさんなんですよね?」
い、いきなり、?
私「いえいえ..! 私はそれほど有名なデザイナーじゃないですよ。」
那津永「そうなんですか?でも、よく色んなブランドとのコラボデザインをしているんじゃ...」
な、何でそれを!?
業界の人間にくらいしか知られてないはずなのに___
私「そ、それはっ...コラボデザインを担当する機会が多いので..ってよくご存知で!」
な、何か恥ずかしい..____
那津永「そりゃ知ってますよ!僕の衣装デザインを担当して下さるデザイナーさんですから。」
熱心なんだな、那津永さんは___
私「そういう所もきちんとチェックしてくださってるんですね!」
那津永「もちろんです。色々な企業をチェックして*si shionie*さんが一番理想的だったので...今回、衣装デザインの仕事をお願いしたんです。」
そこまでちゃんと考えてくれているだなんて、思いもしなかったな...
私「そうですか...私も*si shionie*に憧れて入社をしたので、そう言って頂けると嬉しいです!」
那津永「それより、、お身体の方は大丈夫なんですか?」
私「はい!もうすっかり...!」
那津永「そうですか..でも、ちょっと熱出てますよね?」
私「....っ!」
那津永「なんで分かったの?って顔してますね?何でって明らかにフラフラしてるからですよ。」
那津永「今日はもう打ち合わせも終わりましたし、他に大きな仕事はないでしょう?」
私「な、ないですけど...ただでさえ、2週間仕事をしていなかったのに、、これ以上仕事を放置するなんて...」
那津永「放置じゃないですよ。仕事は体調を整えた上でやるものですから、無理は禁物です。今日は早く家に帰った方が良いですよ」
私「で、でも...」
あ、なんだかお兄さんみたい...那津永さんのが年下っぽく見えるのに___
那津永「では、御倉さんの上司である新川さんに僕が伝えるので、御倉さんはタクシーに乗って帰ってください。」
私「那津永さんにそこまでして頂くわけには...」
那津永「気にしないでください。あなたは、僕の恩人ですから。」
私「そ、そういう訳にも...」
恩人かぁ〜それにしても、手厚いご好意を受けているような...?
那津永「じゃあ、僕が直接あなたを送ります。」
私「.......」
那津永「御倉さん、そこは無言じゃなくて
那津永さんに送っていただけるなんて!って突っ込んでください」
私「あ、いやあの...ご、ごめんなさい。でももし、那津永さんが直接私を家に送ってくださるのだとしたら..那津永さんのご迷惑になるんじゃないかと___。」
那津永「それは、いわゆるゴシップ関連のことについてですか?」
私「はい...那津永さんは芸能界で活躍している方ですから、気を付けないと。」
那津永「大丈夫ですよ、心配はご無用です。僕の家系はメディアには強いので...」
那津永「とりあえず、車に乗ってください」
む、無言の圧力が..___乗らないとダメですよ?って顔をしてるように見えるのは気のせいですか?
私「...で、ではお言葉に甘えて。」
私「でも、メディアに強い、、と言いますと?もしかして、ご家族のどなたかがメディア関係の仕事に就いていらっしゃるとか?」
那津永「うーん?近いですけど、メディア関係の仕事というわけではないですね。」
私「となると...メディア関係の方達と親しい仲だとか?」
那津永「それもそうですが、ハズレですね。」
私「じゃあ、何でしょぅ...っ!!」
那津永「どうかしましたか?」
私「あ、あのいえ...振り向いたら那津永さんの顔がすぐ近くにあったので、驚いただけです、、」
那津永「御倉さん、顔が赤いですよ?」
私「そんなことないですよ?熱がちょっと出てるからそう見えるんじゃないですか?」
那津永「そうですか?にしてもさっきより赤いような...?」
私「あ、じゃっじゃあ、ヒント!ヒントをください!」
那津永「ヒントですか...じゃあ、とっておきのヒントをあげます。」
私「は、はい。」
那津永「NTE TVって知ってますか?」
私「あ、はい。放送局としても有名ですけど、雑誌や新聞なんかも作っている会社ですよね?」
那津永「そうです。では、そのNTETV・雑誌・新聞の大株主をご存知ですか?」
私「い、いえそこまでは...」
那津永「そうですか..では、NTE TVのスポンサーは?」
私「確か、大手企業のKornyがスポンサーだったような..」
那津永「そこがポイントです。」
私「ま、まさか...大手企業Kornyの社長御子息ですか?」
那津永「いわゆる、御曹司です。」
私「と、なると...もしかして、ご両親がNTE TVなどの株を所有していらっしゃると..?」
那津永「そういうことです。なので、心配しないでください。」
私「そ、そうなんですね。」
那津永「あの、敬語やめませんか?」
私「那津永さんって、今おいくつですか?」
那津永「24ですけど..___それがどうかしましたか?」
私「え、、私の方が年下なんですか!?」
那津永さん「僕は何となくそんな気がしてました。」
私「え、じゃっじゃあ、敬語はマズイのでは?」
那津永「敬語やめよう?」
ぅ、そんな風に見つめられると、、頷くしかないじゃないですか...
私「分かりまし、分かった!」
那津永「よしっ!でも、お互い何て呼ぼうか?」
私「うーん?どうしよう??」
那津永「じゃあ、やっぱり下の名前で呼ばない?」
私「し、下の名前かぁ...ちょっとハードル高いなぁ..___」
那津永「じゃあ、俺からね?」
私「う、うん」
那津永「ハル..。」
私「えっと、、しゅ、瞬...さん____」
あれ、、何だか頭がさっきより、ボッーとするなぁ...
那津永「さん付けかぁー」
私「ご、ごめん、、」
那津永「ま、いっか!今日一日でこれだけ仲良くなれたんだし!!」
瞬さん...喋りたいのに上手く話せないよ、、
私「........」
瞬「ハル?」
瞬「ハ、ハルっ!!!どうしたっ?」
私「しゅ、しゅんさ、、」
瞬「ハルっ!!!ちょっだけ、我慢して?急いで病院まで連れて行くからっ!!」
私「...ぅん、」
微かに瞬さんが私の名前を呼ぶ声が聞こえたけれど、。
そこで、私の意識は途絶えた.._____