恋愛生活習慣病
「一緒に、生活?」
って?
オウム返しするだけで頭の処理が追いつかない。
「あの、それってどういう意味……」
「意味はそのままだよ。一緒に暮らすってこと。何を驚いているの」
え、何。聞いてないけど。しかし冬也さんは、当然だって顔と口ぶり。
「聞いてませんけど」
「そうだね。言ってないから」
「言ってないんかい!」
思わず突っ込んでしまったけど、タチの悪い冗談を言う冬也さんが悪い。
だけど冬也さんは全く悪びれる様子はなく、それどころか私のせいにした。
「李紅が言ったんだよ。友だちのヒモ関係が理想なんだろう? 李紅の友人のように、お互い役割分担をして足りない部分を補いながら支えあうためには一緒に生活して傍にいないと無理じゃないか?」
「そ、それは……」
そうかもしれないけど。
「李紅の話だと、女性が住居と生活費を負担して、家事や雑用やストレスケアをヒモ彼が行っているのだろう? 住居は李紅の部屋でも構わないけど、ここだとお互いの職場に近いし部屋も余っている。セキュリティも万全だし何かと便利だ。だから、良ければここに住まないか?」
「ここ、ですか」
「うん。書斎はそれぞれ持つことにして、ベッドルームは一つにしよう。李紅が気にしていた『適度な距離』は個室を持つことで譲歩してくれないか? もしここが気に入らないのなら別に家を探そう。どうする?」
「どうするって……ここが気に入らないってことはあり得ないでしょ」
「そう? 李紅が気に入っているならいいけど。まあ不都合があれば引っ越そうか」
こんな超高級マンションで不都合があるってどんな場合よ。
ていうか、私が一緒に住むのは決定事項なの?
「どうした? まだ何か気になることがあるなら言って?」
冬也さんが優しく問いかけてくれる。
こんなに美形なのに、ハイパーエリートなのに、こんなに優しいとか、神か。
「私と一緒に暮らすって本気ですか? 」
「本気だけど。李紅は嫌? 」
「嫌ではないですけど……」
好きな人なんだから一緒にいたい、という気持ちはある。
でも想いが通じたばかりでがっつりべったりで息が詰まるんじゃなかろうか。
「私、すごい適当に生活してますよ。適当すぎてびっくりすると思う。」
「李紅がどんな風に生活しようが驚きはしないよ。我慢も遠慮もいらない。今まで通りに好きにしてもらっていい」
「友だちと飲み会とかしょっちゅう行きますけど」
「女性だけなら可。この前の男は駄目だ。ああ、サークルの仲間だとかいう他の男どもも不可。理由は可愛い李紅が狙われるから」
いや、可愛くないんで狙われませんて。
岡崎たちが私を好きだとか言うのも、いまいち信じられないし。
「それから、俺以外と出掛ける時は、何時になっても迎えに行くから。いい?」
う……。嬉しいけどちょっと面倒。
「李紅? 面倒でも連絡すること。いいね」
「……はい」
過保護とは思うけど、それで冬也さんの気がすむならいいか。
まあ、この辺はそのうち緩くなるでしょ。
それよりも、本題。
一緒に暮らす……同棲すると私のものすごくダメな部分をさらけ出すことになるし、冬也さんが呆れて嫌になると思う。
「これを話したら、やっぱり冬也さんは一緒に暮らせないと思います。私がヒモ彼が欲しい理由も、これが一番大きいんですけど」
「うん。話して。どんなことでも受け止めるよ」
冬也さんが真剣な面持ちで頷いた。
そして私を安心させるように、微笑んでくれた。
「大丈夫。難しい事だったら一緒に解決策を考えよう」
一緒に、考える。
冬也さん……。
ありがとう。うん、そうだね。まずは正直に話してみよう。
「私、家事をしたくないんです。料理とか掃除とか。洗濯は最低限しますけどそれ以外は極力したくないんです。一人分の家事でも面倒くさいのにそれ以上は無理なんです!」
言った。言ってしまったよついに……!
ダメな女ぶりをばらしちゃったよ……!
冬也さん……ごめんなさい。私、こんな女なんです。
せっかく好きと言ってくれたのに、速攻で失望させてごめんなさい。
「……それだけ?」
「はい。家事ができないわけではないんですが、嫌いなんです。あ、家事は嫌いですけどゴミ捨ては一応するので汚女レベルではないです」
……多分。
「……なんだ。そうか。それは問題ないよ。よかった。大したことじゃなくて」
ホッとしたように息を吐いてますけど、え? いいの? 問題ありありじゃないの?
家事しないんだよ、私。
「あの、冬也さん。家事をしたくないって言ってるんですよ? 結構大したことじゃないですか?」
「弁護士が必要な案件でもないのだし、大したことではないよ」
は? 弁護士?
どんな案件だよそれ。
「私、借金とかしてませんよ? 奨学金の返済はありますけど」
「金で解決できるなら問題ないよ。奨学金は明日、俺が払っておくから金額と振込先を教えて」
「な、何言ってんですか!」
またとんでもないことを言い出したよこの人!
「変な事言い出さないでください。それにやっぱり、いきなり一緒に暮らすのはどうかと思います。付き合い始めなんですから、最初は別々に暮らして、少しずつ距離を縮めていきませんか?」
「却下」
即決かよ!
「冬也さん、あの」
「李紅。俺は李紅と理想的な関係になりたい。だから決心した」
真剣な眼差し。真っ直ぐな視線。決意の籠った声。
微かに走る緊張に、私はごくりと息を呑んだ。
「俺は、李紅のヒモになる」
って?
オウム返しするだけで頭の処理が追いつかない。
「あの、それってどういう意味……」
「意味はそのままだよ。一緒に暮らすってこと。何を驚いているの」
え、何。聞いてないけど。しかし冬也さんは、当然だって顔と口ぶり。
「聞いてませんけど」
「そうだね。言ってないから」
「言ってないんかい!」
思わず突っ込んでしまったけど、タチの悪い冗談を言う冬也さんが悪い。
だけど冬也さんは全く悪びれる様子はなく、それどころか私のせいにした。
「李紅が言ったんだよ。友だちのヒモ関係が理想なんだろう? 李紅の友人のように、お互い役割分担をして足りない部分を補いながら支えあうためには一緒に生活して傍にいないと無理じゃないか?」
「そ、それは……」
そうかもしれないけど。
「李紅の話だと、女性が住居と生活費を負担して、家事や雑用やストレスケアをヒモ彼が行っているのだろう? 住居は李紅の部屋でも構わないけど、ここだとお互いの職場に近いし部屋も余っている。セキュリティも万全だし何かと便利だ。だから、良ければここに住まないか?」
「ここ、ですか」
「うん。書斎はそれぞれ持つことにして、ベッドルームは一つにしよう。李紅が気にしていた『適度な距離』は個室を持つことで譲歩してくれないか? もしここが気に入らないのなら別に家を探そう。どうする?」
「どうするって……ここが気に入らないってことはあり得ないでしょ」
「そう? 李紅が気に入っているならいいけど。まあ不都合があれば引っ越そうか」
こんな超高級マンションで不都合があるってどんな場合よ。
ていうか、私が一緒に住むのは決定事項なの?
「どうした? まだ何か気になることがあるなら言って?」
冬也さんが優しく問いかけてくれる。
こんなに美形なのに、ハイパーエリートなのに、こんなに優しいとか、神か。
「私と一緒に暮らすって本気ですか? 」
「本気だけど。李紅は嫌? 」
「嫌ではないですけど……」
好きな人なんだから一緒にいたい、という気持ちはある。
でも想いが通じたばかりでがっつりべったりで息が詰まるんじゃなかろうか。
「私、すごい適当に生活してますよ。適当すぎてびっくりすると思う。」
「李紅がどんな風に生活しようが驚きはしないよ。我慢も遠慮もいらない。今まで通りに好きにしてもらっていい」
「友だちと飲み会とかしょっちゅう行きますけど」
「女性だけなら可。この前の男は駄目だ。ああ、サークルの仲間だとかいう他の男どもも不可。理由は可愛い李紅が狙われるから」
いや、可愛くないんで狙われませんて。
岡崎たちが私を好きだとか言うのも、いまいち信じられないし。
「それから、俺以外と出掛ける時は、何時になっても迎えに行くから。いい?」
う……。嬉しいけどちょっと面倒。
「李紅? 面倒でも連絡すること。いいね」
「……はい」
過保護とは思うけど、それで冬也さんの気がすむならいいか。
まあ、この辺はそのうち緩くなるでしょ。
それよりも、本題。
一緒に暮らす……同棲すると私のものすごくダメな部分をさらけ出すことになるし、冬也さんが呆れて嫌になると思う。
「これを話したら、やっぱり冬也さんは一緒に暮らせないと思います。私がヒモ彼が欲しい理由も、これが一番大きいんですけど」
「うん。話して。どんなことでも受け止めるよ」
冬也さんが真剣な面持ちで頷いた。
そして私を安心させるように、微笑んでくれた。
「大丈夫。難しい事だったら一緒に解決策を考えよう」
一緒に、考える。
冬也さん……。
ありがとう。うん、そうだね。まずは正直に話してみよう。
「私、家事をしたくないんです。料理とか掃除とか。洗濯は最低限しますけどそれ以外は極力したくないんです。一人分の家事でも面倒くさいのにそれ以上は無理なんです!」
言った。言ってしまったよついに……!
ダメな女ぶりをばらしちゃったよ……!
冬也さん……ごめんなさい。私、こんな女なんです。
せっかく好きと言ってくれたのに、速攻で失望させてごめんなさい。
「……それだけ?」
「はい。家事ができないわけではないんですが、嫌いなんです。あ、家事は嫌いですけどゴミ捨ては一応するので汚女レベルではないです」
……多分。
「……なんだ。そうか。それは問題ないよ。よかった。大したことじゃなくて」
ホッとしたように息を吐いてますけど、え? いいの? 問題ありありじゃないの?
家事しないんだよ、私。
「あの、冬也さん。家事をしたくないって言ってるんですよ? 結構大したことじゃないですか?」
「弁護士が必要な案件でもないのだし、大したことではないよ」
は? 弁護士?
どんな案件だよそれ。
「私、借金とかしてませんよ? 奨学金の返済はありますけど」
「金で解決できるなら問題ないよ。奨学金は明日、俺が払っておくから金額と振込先を教えて」
「な、何言ってんですか!」
またとんでもないことを言い出したよこの人!
「変な事言い出さないでください。それにやっぱり、いきなり一緒に暮らすのはどうかと思います。付き合い始めなんですから、最初は別々に暮らして、少しずつ距離を縮めていきませんか?」
「却下」
即決かよ!
「冬也さん、あの」
「李紅。俺は李紅と理想的な関係になりたい。だから決心した」
真剣な眼差し。真っ直ぐな視線。決意の籠った声。
微かに走る緊張に、私はごくりと息を呑んだ。
「俺は、李紅のヒモになる」