ただ、守りたい命だったから
「…潤?!潤なのか?」

めんどくさそうに来てたのに、私を見た途端にボーゼンとした顔。

『…お久しぶりです。』

「潤っ!」

『きゃっ!』

おもいっきり抱きついてきた。

ぎゅーぎゅー締め付けられて、めちゃくちゃ苦しい。

『ちょ、離して!』

「イヤだ!もう離さない!」

声が掠れてる?

泣いてるの?

「潤…潤!」

何度も私の名前を呼んでいる。

「まぁ、落ち着け。とりあえず、一緒に座っていい?」

朝霧主任が薺を宥めながら、同じテーブルにつく。

私は抱きつかれながら、くっつかれたままで座る。

もう、離すことは諦めた。

「今までハワイにいたの?」

私の首筋に顔を埋め、何も話そうとしない薺の代わりに、朝霧主任が私に問う。

『はい。私の実家があるので。親はいないですが、今は弟と住んでます。』

「弟さんがいたんだ?」

『はい。彼はロンドンにいたんですけど、私がこっちにきたから引っ越してきたんです。』

「そうなんだ。薺、須藤さんのこと探しまくってたよ。安西さんが口固すぎて、全く教えてくれなかったから。」

探してた?

何故探す必要があるの?あっ。

『あの後輩ちゃんにフラレたんですか?』

「はっ?」
< 15 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop