ただ、守りたい命だったから
「…なんで…そんなこと言うんだよ…。オレ、バカだ。お前の怒ってること、嫉妬だからって簡単に考えて、嫉妬してくれることに満足して…お前の話ちゃんと聞いてやらなかった。ごめ…一人で産ませてごめん。不安ばっかりだったよな。父親がいない子供にさせたと、潤ならたくさん悩んだはずだ。悪かった…。潤、この子を抱かせてくれるか?」

ボロボロに泣きながら、私に言ってくる情けない顔の薺。

こんな薺、見たことない。

『うん…抱いてあげて。まだ首が座ってないからね。』

櫂琉がそっと慈季を渡してくれる。

恐る恐る抱っこすると、

「小さい…。慈季って名前なのか?いい名前だなぁ。お前のママ、いっぱい悲しませてごめんな。慈季も腹の中からずっと不安だったよな。ごめんな。……可愛いな…。」

感慨深げに泣きながら話しかけてる薺を見てたら、もう涙が止まらなくなった。

気づけば全員泣いていた。

そのあと、みんなでお昼ご飯を食べ、家に移動した。

二人はレンタカーを借りてたらしく、その2台に別れるのも嫌がった薺がうちの車に乗り、寧々がかわりに朝霧主任の運転する方に乗った。

薺は後部座席に乗り、ずっと慈季を食い入るように見ている。

もう父性が目覚めてるのかしら?

慈季も起きていて、じぃっとおっきな瞳で薺を見ている。

時折手を前に出して、薺の前髪を掴もうとしてる?のかな。

絶対見れないと思ってた、すごく微笑ましい光景にひとり涙ぐんでしまった。



< 18 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop