ただ、守りたい命だったから
家についてからも、薺は私と慈季から離れない。

慈季の寝ている場所の横に座り、私の腰を掴んでいる。

ちょっとでも傍を離れようとすると、置いてかれる子供のような顔で着いてくる。

『薺?離れたら変わったの?最後らへんなんて、デートさえしてなかったじゃない、私達?』

「変わってないよ。本当はずっとこうしたかった。でも、適度な距離も必要って姉貴に言われて…じゃないと、飽きられるって言われて。」

「適度な距離じゃなく、かなりの距離あけてたけど。その上、嫉妬させようと女の子とイチャイチャしたら、余計相手も離れますよね。」

バカみたいってボソッと最後に言った寧々。

いちお、あなたの会社の上司ですよ~!

毒吐いちゃったよ。でも…。

『てか、何それ?薺はお姉さんと付き合ってたの?それって、私の言った言葉じゃないのに、それを私に対して実践したの?ほんと、バカみたい。』

あっ。私も言っちゃった。

でも私はもう部下じゃないもん。

「二人とも暴言!吐きまくりだから。」

朝霧主任がツッコミをいれてくるくらい、私達ひどかったらしい。

でも、それにも振り回された私は、ムカついてしょうがない。

思わず薺の手を、腰から振りほどいてやったし。

「潤~ごめん。」

「てか、聞けば聞くほど、情けねぇ行動しかしてないのな?どこがいんだよ、この人の?」

最後に容赦なくぶったぎったのは、櫂琉でした。

薺を指差しながら、私に言ってくる。

『わかんない。最初から、この情けないの見せてれば、カッコつけなくてすんだのにね。』
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