ただ、守りたい命だったから
「ところで潤さん。バカ息子のせいで、一人で産ませてしまって悪かったね。大変だったろう?これからは少し離れているが、頼ってくれると嬉しいよ。薺をよろしく。」

微笑を浮かべながら言う薺父に、おもわず涙が溢れてきた。

なんだかホンワカした人で、うちのお父さんと雰囲気が似てる気がした。

『はい…。こちらこそ、何も伝えずに…申し訳ありませんでした。慈季に会ってもらえて、本当に嬉しいです。よろしくお願いします。』

薺が頭をポンポンしてくれるから。

余計に涙が止まらなかった。

こんなに嬉し涙を流せる日がくるなんて、夢にも思ってなかったから。

私…幸せだ。

ね、慈季?慈季ももっともっと幸せになれるわね。

「ところで薺!指輪とか用意したの?!」

楓さんの迫力ある言葉に、薺の肩がビクッと揺れた。

「いや…サイズわかんなかったから、まだ…。一緒に選びたいなと。」

「こういう時って、さらっと準備してくれてたら、感動ものなのに、相変わらず締まらないわね。サイズ位知っておきなさいよ!」

「うるせぇな。どうやってだよっ!」

薺、ご立腹。

「寝てる時に糸で巻き付けて…とか、櫂琉くんに聞いてもらうとか、いくらでもあるでしょ!」

楓さん、本当に強い。

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