ただ、守りたい命だったから
そこさえ乗りきれたら、薺とは会うこともなくなる。

私にはこの子がいるから大丈夫。

それからの私の行動は素早かった。

病院に行き、海外で産むことを伝え、ハワイにいる友達に病院を探してもらった。

私は小さい頃、ハワイに住んでいて、まだその家も残っている。

友達に管理してもらってたから、すぐ住めるようになってる。

父と母は交通事故で亡くなった。

私が大学を日本にして卒業し、そのまま就職を決めた年だった。

5年前の事だ。

二人はかなりの遺産を残してくれていて、イギリスやスペインなんかにも未だに家がある。

なんだか手放せなくて、いつか気ままに住めたらいいなと、とっておいたものだ。

ちなみに、私には唯一の肉親である、2個下の弟がいる。

今はイギリスにある家にひとりで住み、働いている。

1年に一度は必ず会うようにしているのが決まり事。

連絡しなきゃだなぁ。

こわくて言えない。

とりあえず、薺がいないあと11日の間に荷物の処分をし、いるものはハワイに送る。

薺が戻ってきた3日は、絶対二人にならない。

幸いにも私は悪阻が軽いらしく、今のところ味覚が変わったくらいで何ともない。

これでバレるリスクは減った。

3日間はホテル暮らしをし、そのまま飛び立つ予定。

さすがに今まで一緒にいた同じ課の友達、寧々(ねね)には全てを話した。


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