世界にひとつのどこにもない物語
「私…ウチ、ホンマは関西の出身なんです。

故郷を出た時から…と言うよりも、就職活動の時から標準語を使っていたんですけど」

「知っとったで」

まやの話をさえぎるように、狼谷が言った。

「えっ?」

まやは驚いたと言うように聞き返した。

「し、知っとったって…」

(まさか、心の声を全部聞かれてた?

だって、関西出身やって言うた覚えなんてないし…)

狼谷が知っていたことに驚いて戸惑ったまやだったが、そう言えば…と振り返った。

自分が教えてもいないのに、狼谷はミルクティーが好きなことやコンソメスープが好きなことを知っていた。

教えたこともなければ言ったこともないのに、どうして狼谷は知っていたのだろう?

そう思っていたら、
「何や、まだ思い出せへんの?」

狼谷が言ってきた。
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