世界にひとつのどこにもない物語
「まや」

狼谷がまたまやを呼んだ。

「何や」

そう返事したまやに、
「必ず迎えに行くから」

狼谷が言った。

「大人になったら、必ずまやのことを迎えに行くから」

狼谷はそう言って、まやの前に小さな小指を差し出した。

「うん、待っとるよ」

その小さな小指にまやは笑った後、自分の少し大きな小指を絡めた。

「指切りげんまん」

彼と一緒に声をそろえて、決まりの文句を言った。

お互いの小指を離すと、
「必ず迎えに行くから、絶対に待っててな」

そう言った狼谷にまやは首を縦に振ってうなずいたのだった。

 * * *
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