世界にひとつのどこにもない物語
まやは狼谷を見つめた。

あの頃よりも身長が伸びて、今は自分を見下ろしている幼い彼が目の前にいた。

狼谷はフッと笑うと、
「あの頃の約束、果たしてええか?」

そう聞いてきたので、まやは首を縦に振ってうなずいた。

「わい、あの頃からまやのことが好きやった。

誰に対しても優しくて、明るくてノリのええまやが好きやった。

昔と…今のクールなところも全部ひっくるめて、わいはまやが好きや。

まやの全部が好きやから、わいと結婚して欲しい。

わいの嫁になってくれへんか?」

狼谷の手がまやの前に差し出された。

その手は大きく、とても男らしかった。

「…ウチでええの?」

そう聞いたまやに、
「まやがええから言うてるんや」

狼谷が笑いながら答えた。
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