世界にひとつのどこにもない物語
「今月号は副社長の特集と言うこともあってか、売りあげがかなりよかったみたいですよ。

増刷も2回ぐらいされたとか」

「そうなんですか…」

それは納得だ。

銀行の客たちの様子からして見ると、彼を見たさに経済誌を買った女性たちはたくさんいたことだろう。

「それで、えーっと…」

倉坂の手によって経済誌が開かれた。

高層ビルをバックに腕を組んで、黒いスーツ姿の狼谷が口角をあげて不敵に笑っているページが出てきた。

「その資産は何と、700億なんだそうですよ!

はあー、かっこいいなー」

恋する乙女のように見つめている倉坂を無視すると、まやはページの下に表示されているプロフィールに視線を向けた。
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