世界にひとつのどこにもない物語
「仕事ならとっくの昔に終わったわ。

今はまやを家まで送ることがわいの仕事や」

そう言った狼谷に、
「はっきり言います、間にあっています。

送ってもらわなくても結構です」

まやは言い返した。

「そんな冷たいことを言わんでもええやないの。

本当に家まで送るだけなんやから、なっ?」

狼谷が引き止めるように腕をつかんできた。

「ちょっ、ちょっと…!」

つかまれてしまった以上どうすることもできなくて、まやは車の助手席へと放り込まれてしまった。

「シートベルト締めた方がええで。

なるべく安全運転で行くけど、この先のことはわいにはようわからんから」

運転席に狼谷が乗ってきた。
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