世界にひとつのどこにもない物語
「えっ、自分で運転するんですか?」

まやは驚いたと言うように聞き返した。

副社長と言うくらいだから、てっきりおつきの運転手がついているんじゃないかと思っていた。

「運転手つきの車に乗るのは社長と決まってんねん。

わいはまだ副社長やから自分で運転せなあかんのや」

車にエンジンがかかった。

(意外や…)

まやは心の中で呟いた。

自分の想像が世の中と一緒とは絶対に限らないと言うことを改めて知らされた。

「家はどこや?」

狼谷が聞いてきたので、
「K町」

まやは答えた。

「K町って、結構広いで。

せめて何丁目かまで答えてくれんと」

そう言った狼谷に、
「K町まで行ったら後は自分で歩きますので」

まやは言い返した。
< 30 / 111 >

この作品をシェア

pagetop