世界にひとつのどこにもない物語
「えっ、どないしたん?」

突然驚いたまやに狼谷は訳がわからないと言う顔で聞き返した。

弾かれたように走り出して向かった先は、住んでいるアパートだった。

築30年の3階建てアパートの前にはたくさんの野次馬と何台かの消防車が止まっていた。

「すみません、退いてください」

野次馬の間を縫うように歩きながら、まやは前へと進んで行った。

「ああ、天都さん」

前に出たまやに声をかけたのは、アパートの大家さんだった。

「大家さん、一体何があったんですか?

火事ってどう言うことなんですか?」

早口でぶつけるように聞いてきたまやに、
「まあまあ、落ち着きなさい。

火事って言ってもボヤらしいから」

大家さんがなだめるように言い返した。
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