世界にひとつのどこにもない物語
(間にあったわ…)

腕時計で時間を見た瞬間、まやはホッと息を吐いた。

急いで支度を済ませて、狼谷の車でビルの前まで送ってもらったおかげでどうにか遅刻をしないで済んだ。

「帰りは昨日みたいに歩いて一緒に帰ろうな。

昨日と同じ場所で待っとるから」

運転席から狼谷が声をかけてきた。

「今日もですか?」

そう聞いてきたまやに、
「当たり前やがな、昨日みたいな出来事が起こったらどないするんや。

もし1人でおるところを元彼に絡まれて、ましてや誘拐されたら話にならんやろ」

狼谷が答えた。

彼の言う通りである。

昨日は狼谷がいたから自分は無事に家に帰ることができたのだ。

もし彼が隣にいなかったら、自分はあの場所から1歩も動くことができなかっただろう。
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