世界にひとつのどこにもない物語
「でも遅くなる時があるかも知れませんよ?

計算があわなかったらあうまで帰れなくて、それこそ帰るのが真夜中になるって言う時だってあるんですよ?」

そう言ったまやに、
「構へんよ、まやの仕事が終わるまで待ったるから」

狼谷は笑いながら答えた。

「それよりも、時間はええか?

急いどるんちゃうの?」

狼谷に言われて、まやは思い出した。

慌てて車から降りようとしたら、
「行っておいで」

狼谷に声をかけられた。

不覚にも、心臓がドキッ…と鳴ってしまった。

顔に熱が持ち始めていることが、自分でもよくわかった。

「い、行ってきます…」

呟くようにまやは返事をすると、熱くなった顔を隠すように車を降りた。
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