世界にひとつのどこにもない物語
(もう何やの!?

顔が熱なってしゃーないわ!)

逃げるように車を降りたまやは走ってビルへと足を向かわせた。

チラリと後ろを振り返ると、いつもの高級車がまだあった。

高級車から目をそらすと、まやは駆け込むようにビルの中へと入って行った。


いつものように仕事を終わらせると、狼谷はビルの前に到着した。

海外モデルの腕時計に視線を向けると、7時を過ぎたところだった。

周りを見回すが、まやの姿はなかった。

まだ仕事が終わっていないのかも知れない。

「まあ、ええか」

狼谷は息を吐くと、空いているベンチに腰を下ろした。

スーツの胸ポケットからスマートフォンを取り出そうとした時、目の前に見知った人物を見つけた。
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