世界にひとつのどこにもない物語
(何で今さら、そんなことを言うんよ…)

心の中でまやは呟いた。

「まやだって、元彼に言いたいことやぶつけたいことがあるんやろ?

これを機会に元彼にいろいろとぶつけたらどうや?

“何で私を捨てたんだ!”って怒って、それこそ殴ったらええやないの」

そう言った狼谷に、
「な、殴るだなんて…!」

まやは思わずうつむいていた顔をあげた。

「すまん、殴るは言い過ぎたわ」

狼谷は申し訳ないと言うように手を前に出して謝った。

「でもな、このまますれ違ったまま言うんはよくないと思うねん。

まやだって、これ以上元彼のことを恨みたくないやろ?」

確認するように聞いてきた狼谷に、まやはためらいながらも首を縦に振ってうなずいた。
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