世界にひとつのどこにもない物語
「そんなことで、ウチが軽蔑すると思たんか?

ウチのことを信じてへんかったん?」

「信用しとった…!

まやのことは誰よりも信用しとった。

でも…でもまやには、ちゃんと人生があるやないか。

俺のせいでその人生をめちゃくちゃにしとうなかったから…」

「だから、ウチの前からいなくなったんか…」

まやは両手で隠すように顔をおおって泣いた。

「ホンマにすまんかった…!」

泣いているまやに向かって、嘉門は先ほどと同じように泣きながら謝った。

「――ウチな、嘉門くんに裏切られたって思ったんよ…。

嘉門くんがいなくなってから、誰も信用できんようになって…もう毎日のように逃げることばっか考えとったんや」

まやは泣きながら嘉門に言った。
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