世界にひとつのどこにもない物語
「ウチ、嘉門くんに会えてよかったわ。

もし会って詳しい話を聞けへんかったら、嘉門くんのことを一生恨んどったと思う。

だから、会えてよかった。

会えて話をすることができてよかった」

そう言った後、まやは笑った。

営業用の作った笑顔ではなく、心の底からの笑顔だった。

「まや、ホンマにすまんかった」

「もうええよ、こうして思いをぶつけることができてホンマによかったわ」

そう言いあって笑った時、パチパチと拍手の音が聞こえてきた。

視線を向けると、狼谷だった。

「よかったな、無事に話しおうことができて」

そう言って笑っている狼谷だったが、まやはこれが彼立ち会いの元での話しあいだったと言うことをすっかり忘れていた。
< 98 / 111 >

この作品をシェア

pagetop