花びらを届けて
序章
今年もだ。

肌寒くなり、白いひげをつけてトナカイに乗った人が訪れる２週間ほど前、
私は思っていた。
会いたいという言葉では収まりきれないくらいの会いたいが頭を埋め尽くす。
ああ、嫌だ。考えれば考えるほど・・・・

冬になるといつもこうだ。寒くなり、街にはカップルが増える。

私だって彼氏がいないわけではない。
今までいなかったわけではない。

ただ、好きな人を思い出してしまう。考えてしまう。

なんでこうなってしまったのだろう。
なんでいつまでたっても諦めきれないのだろう。
そんなの考えても無駄で、最終的にいつも考えてしまうのは会いたいということだけ。
一緒に撮ったプリクラ、カメラロールの消せない写真、もらったキーホルダー。
無駄に引っ張り出して見つめて泣いてしまう。

なんて女々しいのだろう。

だからこそきっと寒い寒い１２月に好きな人と寒いねと笑い合える幸せを
感じているカップルが羨ましいのだ。
『はあ・・・』
ため息をついて、繰り返される毎日に今日も私は向かう。
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表紙・目次

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