コグライ



羨ましかった?



予期しない彼女の言葉に驚き、息が止まった。彼女は兄と自分の子との日々を思い出すように深い息を吐き、やわらかな口調で動機を私に告げていった。



「コウイチはね、とてもサコのことを可愛がってたの。とっても仲が良くて、私が名前を呼んでも見ようともしないのに、コウイチが名前を呼んだら一生懸命手を伸ばすの。

かわいいよね、サコちゃん」



淡々と、とは彼女のように無機質な様子のことを意味するのだろう。かわいいという声には、感情がなかった。



「それで……どうして?」

「ううん。私の方を見てほしかったな、って二人に教えてあげたくて。サコちゃんとの間に入ろうとしたら、コウイチはものすごく怒るの。

俺が遊んどいてやるから家事をしてろ、って」



ふっと言葉を止め、彼女は俯いた。
彼女は今、何を想起しているのだろう。






「……コウイチ、優しい人だったのになぁ」








これ以上兄のことを聞きたくなくて、私は二つ目の質問をする。今、私は彼女から逃げた。優しい兄の姿を知っているから彼女の言うことは何かの間違いだと思った。



「……サコちゃんを殺したのは、なぜですか」



彼女は声を発さず、しきりに口を動かしている。その顔には、疲弊の色が浮かんでいた。



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