そのイケメン、オタクですから!
わぁっ、今ナナって言ったよね?!
本当に妖怪だ!
に、逃げよう!

思いっきり踵を返した私の背後で「俺のこと妖怪か何かだと思ってる? 君って本当に分かりやすいね……あははっ……」と桜井先輩は大笑いしだした。
もう我慢できない、とばかりに。

「……あのぉ?」
状況が全く飲み込めないんですが。
先輩は妖怪じゃないの?

「あはは、ごめん。
君のバイト先、行ったことあるんだよ。覚えてない? まぁあの時は新人さんだったし、客の顔覚える余裕もなかったか。俺、女の子の顔は絶対忘れないから。どんなに変装上手でもね。ナナちゃんは、悠斗、ゆうぴょん御主人様だっけ? ぷぷっ、気付いてるんでしょ?」

「…………」
返す言葉が見つかりません。

「大丈夫、悠斗にも誰にも言ってないし、言わないから。バイト解禁になってから自分で言いたいんでしょ?」

桜井先輩は、やっぱり天使だった。
私が生徒会に入った時から気付いていたんだ。

私の目的も知ってて、ずっと知らん顔してくれていたんだ。
よっちゃんの言う通り、及川先輩よりも桜井先輩の方が数倍鋭かったみたい。

「あの……黙っててもらってありがとうございます」
「うん。俺は女の子の味方だからね」

笑顔が太陽みたいに眩しい。
桜井先輩は、天然のイケメンだ。
まるでモテるために生れてきたかのような雰囲気に、この人を好きにならなくてよかったと心から思う。
< 100 / 193 >

この作品をシェア

pagetop