そのイケメン、オタクですから!
「あ、悠斗」
「えぇ!?」
桜井先輩の視線を追っていくと、階段を降りて曲がってくる及川先輩が目に入った。

「何だよ、用って」
ちらりと私に目を向けて、及川先輩は桜井先輩に尋ねる。

桜井先輩は涼しい顔で「用があるのは七瀬ちゃんみたいだよ」って答えた。

ちょっ、どういう事!?
桜井先輩を睨むけど、目力は先輩の方が数倍上で「言わなきゃばらすよー」という声が聞こえてきそうだ。

こんな形で告白とかありえないし。
だからって退学になって及川先輩にバイトの事がばれるなんて絶対嫌だ。

「じゃあ、ごゆっくり」
桜井先輩に背中を押され、及川先輩と二人生徒会室に押し込められた。

「えーっと、あの、その……」
「…………」

ごもごもしてる私に、及川先輩は何も言わない。

空気が重すぎるー!

とりあえず頭を抱えてしゃがんだ私に、及川先輩は「また地震か?」と冷めた声で言う。
見上げると軽く口の端を上げて椅子を引いた。

「話って、何?
今日だから、期待してる俺は馬鹿なのかな」

切ない表情に、心臓がトクンと跳ねた。

二人きりになったのはクリスマスイブ以来だ。
理由は私が避けていたからに他ならないんだけれど。

今日1日で1週間分ぐらい働いてるんじゃないかと思うぐらい心臓が早鐘を打つ。
ずっと待たせてた……何か、言わなきゃ。

うつむいたまま、私は口を開いた。
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