そのイケメン、オタクですから!
「で、チョコレートは?」
照れ隠しなのかぶっきらぼうに先輩が言った。

そうだった。
今日はバレンタインデー、普段は厳しいこの学校でもみんなが隠れてチョコを持ち込む日。

桜井先輩なんて両手いっぱいに抱えて隠せてなかったけれど。

でも私は、断るつもりだったから用意なんてしていない。
困ったな、と思いながらポケットに手を突っ込んでみると、指先に何かが触れた。

取り出してみると、テスト勉強中に先輩がくれたチョコだった。
金色の包み紙で覆われた、ピーナッツ入りのチョコレート。
「これ、半分こで……」
「まだ食べてなかったのか……? しかも2か月以上もポケットに入れっぱなしの上、半分こって……」

完全に呆れた顔してる。
でも目は優しい気がするのは、きっと気のせいじゃない。

じゃあ今度はこっち。
ポケットの中にはビスケットが一つ、ポケットを叩くとビスケットは二つって心の中で歌いながら左のポケットに手を突っ込む。

出てきたのは……ネックレス。
「チョコは……出て来ませんでした」

呟いた私の掌からそれは奪われた。
「絶対外すなよ、お前は俺のだから」

偉そうなのに恥ずかしがりの王子さま。
きっと後ろでは自分の言葉に赤面してる。

うなじの髪をよけられて、私には首輪がつけられた。
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