そのイケメン、オタクですから!
お昼ごはんを食べる暇もなかったから、午後はお腹をぐぅぐぅ鳴らしながら授業を受けた。

何も言ってないのに、よっちゃんは「幸せが漏れてる……」って言ってくる。

生徒会に向かう前に、まだざわついている教室で私は小声でよっちゃんに話しかけた。
「ねぇ、よっちゃん。桜井先輩ってば、私がナナだって知ってたんだよ」
「そうだね」

気のない返事のよっちゃんは、きっと健くんのことで頭が一杯なんだろうけれど。
どうして全く驚かないの?

「驚かないの?」
「そうだろうな、って思ってたから。前に聞かれたんだよね。留愛って学校外に彼氏いないのって。」
「そうなの? 何で桜井先輩が?」
「そりゃ、留愛が及川先輩の想い人だからでしょ。仲良いもんね、あの二人」

確かに仲はいい。
タイプは全然違うけど。

でも桜井先輩のおかげで気持ちが伝えられたんだから、いつかお礼を言わなきゃ。

及川先輩の顔を思い出すと……ダメだ。
にやけてきちゃうのが自分でもわかる。

後2週間で期末テストだし、バイトの自由化についての学校からの返答もあるはず。
気を抜いてちゃだめだよね。

と思うけど、ダメだー。
唇が触れた瞬間を思い出して一人で赤くなる。

ずっと抑えてたのに、いつの間にか私の頭の中は及川先輩でいっぱいになってた。

めいどいんふぁいとでの恥ずかしそうな彼も、学校での自信満々な彼も、どっちも好き。
こんな気持ち、初めてだ……。
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