そのイケメン、オタクですから!
私は大げさに先輩の腕を引っ張った。
「先輩! ナナって誰ですか?」

「ナナは、今日は夕方から来ますぅー」
早口に言ってリリが背を向けた。

リリの後姿を見送って「さっき私が一番だって言いましたよね?」って暗い声で言ってみる。

とにかく先輩の注意をナナから逸らしたい。
あんまり留愛に向けられるのも困るんだけど、ナナの話はもっと困る。

先輩は「す、好きなのはお前だけだ」ってまた言った。
頬を染めて。

こういう時の先輩はとっても可愛くて胸がきゅんとしちゃう。

だけど、どうせなら二人きりの時に言われたかった。

あーぁ、今日は先輩の好きが大安売りになっちゃった。
……私が言わせてるんだけど。

賄いでは美味しいって食べてるオムライスなのに、今日はゴムでも噛んでるみたい。

リリが私と先輩を「留愛きゅんお嬢様」と「ゆうにゃんご主人様」と呼んで、オムライスにハートと猫を書いてくれた。

ゆうぴょんご主人様じゃなくて良かった、と思いながら曖昧な笑顔でスプーンを動かす。
ステージはルルがセンターで踊ってたけど、先輩は私の事ばっかり見ていた。

ここにナナがいたら、先輩はナナのステージに釘づけなのかなって、思ってみたりした。
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