そのイケメン、オタクですから!
苦行のような1時間を終えて、めいどいんふぁいとから駅に向かう。
すぐにまたここに来るんだけど、と思ったら、自然にため息が漏れた。

先輩が「ごめんな、疲れた顔してる」って私の頭をポンポンする。

温かい掌に、胸がきゅんと締め付けられた。
「お前には知っててほしいと思ったから。俺かっこいいとこばっかじゃないけど、お前には嘘つきたくない」

ずっと悩んでたのかもしれない。

自分をさらけ出した先輩は晴れやかな顔をしてる。
すごく魅力的で、心臓がぴょこんと跳ねる。

こんなに素直で真っ直ぐな人が私を想ってくれてるのに、私はまだ嘘をついている。

私がナナだって言えたらいいのに。
先輩はきっと受け入れてくれると思う。
なんて自分勝手なことを思う。

言っちゃおうかな。
今ここで……。
言えたらきっと楽になる。

「先輩……」

「ん? 時間やばい? 送ってこっか」

先輩の言葉に時計を見ると、バイトまで後30分しかない!
ナナへの変身に30分はかかるから、急がないと間に合わない。

「ごめんなさいっ、私急がないと。また連絡します!」
駅まで走って行って通り過ぎて、裏道を使って店まで戻る。
< 114 / 193 >

この作品をシェア

pagetop